2013年 05月 30日
舟に乗る前は一時間で充分と思っていたが、時計を見るとすでに40分が経過していた。 すかさず船頭が「チャム族の村へ行こう」と言う。 なるほど、始めから二時間の予定で舟を漕いでいたのだ。 二世紀から十九世紀まで、べトナムの南半分は『チャンパ王国』だった。 当時、東南アジア一帯はインド文化の影響を強く受け、言語や宗教だけでなく、文学、哲学、政治、建築、音楽など、ありとあらゆるものがインドから伝えられたが、チャンパ王国も例外ではなかった。 べトナムの中部から南部にあるレンガ造りのヒンドゥー教及び仏教遺跡は、すべてチャンパ王国時代に建てられたものである。 世界遺産のミーソン聖域やニャチャンのポーナガールなどが代表的だ。 ちなみに、サンスクリットでは『インドソケイ(プルメリア)の花』をチャンパカと言うが、チャンパ王国は、チャンパープラあるいはチャンパーナガラ、すなわち『インドソケイの国』という意味である。 そのチャンパの末裔がチャム族なのだ。 チャム族は十三世紀頃より、イスラム教を信仰するようになった。 なので、村には必ずマスジッド(モスク)があり、女性達はヒジャブを着用している。 村の入口には民芸品を売る店があり、さながら観光地のようであった。 間もなく、盥(たらい)を持った少女二人がやって来て、ワッフルのような菓子を取り出し、ひとつ1ドルで買ってくれと言う。 僕は機織りの様子なんかを見学しながら、適当にあしらっていたのだが、これがなかなか辛抱強く食い下がってくるのだ。 やがて、フランス人の団体がやって来たので指さすと「あの人たちは買わないよ」と言う。 僕は、少女の見切ったようなその態度が妙に気になった。 いったい誰なら買ってくれると言うのだろうか? かわいそうだが、僕だって無駄な買い物はしたくない、かと言って、何も買わずに出て行くのも心苦しい。 そこで売店へ行き、数珠風のブレスレットをひとつ買って帰ることにした。 Canon EOS 5D EF70-200mm F4L IS USM
by artisfoto
| 2013-05-30 19:00
| ベトナム
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