2013年 04月 18日
部屋に戻ると、急に寒気と倦怠感が襲ってくる。 どうやら、昨晩カントーの宿で、エアコンをつけたまま眠ったのが原因らしい。 いつもなら、そんな事はやらないのだが、昨夜は特に蚊が多く、このままでは眠れないと思って、つい朝まで放置してしまったのだ。 僕はベッドで横になり毛布に包まった。 しばらくして目を覚ますと、汗でTシャツがびっしょりになっていた。 時計は8時を回ったところだが、このまま眠ってしまえば、間違いなく夜明け前に目が覚めてしまうだろう。 そうなると、この古い病院の一室のような部屋で、ひとり夜明けを待つことになる。 それだけはご免被りたいと思った。 食欲は無かったが、とりあえず何か腹に入れておこうと思い外へ出てみる。 その店はホテルから5分程のところにあった。 客がひっきりなしにやって来るのを見て、美味しい店に違いないと、昼間に目星をつけておいたのだ。 しかし、運ばれて来たフーティウは、何とも貧しいものだった。 ところが、スープを口にした瞬間、思わず唸ってしまった。 とにかく圧倒的な旨味とコクがあり、これまで食べたフーティウとは比べものにならないくらい美味しかったのだ。 「いや待てよ、これは以前どこかで食べたことのある味だぞ。」そう思いながら麺をすすると、突然記憶が蘇ってきた。 「プノンペンで食べたクイティウと同じじゃないか。」 なるほど、フーティウのルーツはカンボジアのクイティウだと言われているが、確かにそうなのだろう。 ホテルに戻る途中、シントーの屋台を見掛けたので、買ってみることにした。 シントーとは、生の野菜やフルーツを練乳や氷とともにミキサーにかけたもので、べトナムではかなりポピュラーな飲物である。 僕はキャロット(にんじん)とトム(パイナップル)を注文、代金は両方で13,000ドンだという。 「おいおい、それではあまりにも安過ぎるではないか。」そう思ってもう一度娘に尋ねると、その金額で間違いないと言う。 まるで10年前の価格だった。 僕は少々得をした気分になり、プラスチック容器から飛び出たストローをつまみながら、甘くひんやりとした液体をすすった。 ふと夜空を見上げてみると、果てしない漆黒の宇宙の闇に、青白い満月がぽっかりと穴を開けたように輝いていた。 RICOH GXR GR LENS A12 28mm F2.5
by artisfoto
| 2013-04-18 14:21
| ベトナム
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